2016年1月4日(月) № 214 『 増補版 旭東教会  牧師室便り 8号 』

2015年のアドヴェントの頃からやって来たシクラメン。他にも二鉢あるがこの子が一番。何が理由かは不明ながら・・・・・・
2015年のアドヴェントの頃からやって来たシクラメン。他にも二鉢あるがこの子が一番。何が理由かは不明ながら・・・・・・

       『  増補版 旭東教会  牧師室便り 』
             2016年1月3日(日) NO.8

 

「来年まで会えんと思うと、寂しいなぁ」

 

そう言って病室でお別れした恭子姉は《にこーっ》と笑われた。

 

病室を正兄と妻の美樹さんと3人でお訪ねしたのは年の瀬12月30日の午後のことだ。

 

12月23日のキャロルに行って下さったK正兄とI幹子姉からは「かなり辛そうで早々に失礼した」とお聴きしていた。

 

だからだろうか。よく通う岡山市内中心地方面のK病院への道中、この日は三人とも言葉少なだった。

 

でも、結果的には幾つもの驚きを覚えることになる。

 

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「失語症の症状ですねぇ」

 

医師でもあるK正兄から秋の気配を感じ始めた4ヶ月ほど前にお聴きした時、回復は難しいなぁと思ったものだ。何やら様子がおかしいなとは思った。が、これが失語症という場面に出くわしたことはなかったのだ。

 

「はい」程度の言葉はでるものの、その後、頭の中やこころの中に描かれていることを我々に伝えようにも、言葉がほとんど続かない。

 

「あーー」で終わることが多くなった。

 

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ところがこの日の恭子さん。

 

短い言葉だが、口ごもることもなくお話になるではない。

 

美樹さんは数ヶ月ぶりのお見舞い。

 

「恭子さん前と変わらんよっ」とつぶやいた程だった。

 

実は更に正月明けの3日(日)の夕刻、訪ねてみると更に驚くべき回復ぶりを示された。

 

「ありがたいなぁ先生」「よっしゃ、頑張るぞ」とか。

 

あるいは、同行された、季具枝(きくえ)さんが差しだしたカンロ飴。

 

喜んで口に入れて、生きて行く力があることを証しするかのように、口の中で転がしてなめるのではなく、カリカリとかみ砕き始めた。

 

とても美味しそうに。

 

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年末の訪問時。

 

教会随一のモバイル少年!正兄(91歳!)は、教会のホームページを見ることが出来る、程よい大きさのタブレットを肩掛けカバンから引っぱり出した。

 

時々なさることなのだが、ホームページトップの「今週の3枚!」の写真集を開いて恭子さんに見せ始められた。

 

私もお手伝い。

 

画面をスクロールさせ、クリスマス愛餐会の教会名物煮込みハンバーグの写真をお見せした。

 

すると、恭子さんは目を細め、一呼吸いれて言われた。

 

「あー食べたかぁー」と。

 

長くお暮らしになった博多弁で。

 

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12月20日(日)の午前10時頃、実は、恭子さんのお姉さまと妹さんが、礼拝には出席はされなかったが来会。三姉妹、お顔はそっくりで嬉しくなった。

 

幾つかのことをお伝えになったけれど、「もう、食べ物も口に入らなくて・・・もしもの時には」と言われてお帰りになったのだった。明らかにもう限界です、でも本当に今年一年お世話になって、ということだった。

 

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奇跡というのは聖書の中だけのこととは決して言えないなぁと知らされる。

 

この程度のことはよくあるか、と言うとそうは思えない。

 

もちろん、重荷を負われていることは変わりない。

 

ベッドの傍らでの沈黙も長くあるし、私も無力感にさいなまれるのも本当。肩をすぼめて変えるとはこのことか、ということが幾度会ったことだろうか。

 

お祈り頂きたい。

 

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他にも、教会の営みの中で小さな奇跡と感じることがあった。

 

瀬戸内市の邑久(おく)にお暮らしの迪子さん(3月で92歳)。

 

12月23日(水)の午前、ミニキャロリングとして5名で訪問。ご家族からは、車椅子で公園へということもあり、教会に行く元気は……と伺っていた。

 

その日はクリスマスの家庭礼拝プログラムを使ってご一緒し、帰り際には参加者がそれぞれに耳元で「御機嫌よう」の挨拶をした。

 

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きくえさん(10月で94歳)がキャロルのメンバーに居られた。

 

きくえさん、最後に熱烈に教会に来るようにと誘ったのだった。

 

この時、私は心の中で、「キクちゃん、もう無理は言えんよ」とささやいた。

 

ところがだ。

 

12月27日の歳晩礼拝の日。礼拝堂には杖をつきながらのいつもの迪子さんの白髪が見えた。

 

感謝。

 

そして、ごめんなさいと思った。

 

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おいしさが忘れられない2015年のクリスマスの食事がある。

 

どんなごちそうだろう。

 

12月19日(土)のお昼ご飯は、ハンナの会の方たちとご一緒した。わたしは他のあれこれで忙しくしていた。そこでご飯ですよ、と呼ばれたのだった。

 

翌日のクリスマス愛餐会の旭東教会名物煮込みハンバーグや、ゆず風味の浅漬けの下準備にお出でになっていた。

 

10名近くほど居られただろうか。

 

その日は、おにぎりと浅漬けとお手製の昆布の佃煮が並んだ。あとは少しだけお値段高めのインスタント味噌汁。

 

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豪華な何かがそこにあったわけではない。

 

質素だった。

 

でも、私はごく自然に「おいしいなぁ今日の昼ご飯」と言った。

 

とその時だ。

 

斜め隣に居られた美穂子さんが間髪入れずこう言われた。

 

「おいしいなぁ、いつも独りじゃから」と。

 

つまり考える間もなく、ということ。美穂子さん、心底そう思われたのだ。

 

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去年の9月にはH一成兄が召され、12月にはN和義兄が召天。M由美子姉も秋にはご主人を天に送られた。

 

それぞれに日々の食卓に変化があったことを思う。

 

他にもお一人の食卓に着かれている方は幾人も居られる。

 

そして今思うのだ。

 

教会は一緒に食べることを大切にする共同体なのだなぁと。

 

パンの奇跡が様々に起こり、主の晩餐を祝う。

 

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若い頃に育てて頂いた東京の教会。大教会だ。礼拝は最近朝は340名程度の出席者と統計表にある。

 

でも、そんな中で、毎週火曜日の早天祈祷会後の朝食がわたしの心の置き場だった。

 

炊きたてのご飯に生卵とインスタント味噌汁。時に京都の湯葉等が上品に煮付けられて食した。

 

築地からお出でになる武上さんは朝からアジフライも出してくださった。

 

やっぱり10数人の食卓なのだが、皆で机を囲んで食べるとおいしかった。

 

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悔い改めはどこで起こるのか。

 

恵みにふれたとき。そう教えられた。

 

わたしは今アーメンと応える。

 

昔も今も変わらない。きっとこれからも。

 

2016年も毎月の週報発送に合わせポツぽつと記して行きたい。end

 

 

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