2014年10月26日(日)№163 『 増補版 最北通信 稚内教会 牧師室便り 31号 』

癒しを感じた、苫小牧地区の島松伝道所の礼拝堂内部です。講壇の方から撮影。日曜日に向けての準備も整いこころ穏やかになる空間だった。
癒しを感じた、苫小牧地区の島松伝道所の礼拝堂内部です。講壇の方から撮影。日曜日に向けての準備も整いこころ穏やかになる空間だった。

※今号は、ダラダラーっと長い増補版です。覚悟のある方だけがどうぞ(笑)

元々の「牧師室便り」は、教会ホームページの「お便り」の部屋の中にあります。ダウンロードして下さい。

 

年に一度、日本キリスト教団・北海教区の牧師たちが研鑽を重ねる「教職講座」に10月13日(月)~16日(木)まで参加した。

 

会場は石狩平野のど真ん中、米所として知られる新篠津(しんしのつ)。同労の仲間たちと寝食を共にし、学び、考え、祈り、語り合い、聴き合い、笑って泣いてという時間を今年も過ごせたことは有り難いことだと思う。

 

日本キリスト教団の他の教区でも似たような牧師たちを対象とした講座や研修はあると思う。

 

しかしそれらは多くて2泊、ひょっとすると1泊だけという所が多かった。

 

北海教区はどうかというと、3泊4日の時間設定がされている。いそがしい仲間たちも多く、みんなが全ての日程に参加できるとは限らないが、無駄なように見える3泊4日の時の流れというのは、意味深いものだと感じた。

 

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講座に滞在中、何人もの先輩牧師が、「また雪だなぁ、頑張るかー」というようなことを口にしていた。冬を前にして様々な意味で充電の機会としているのは、長年の積み重ねから得た智恵だろう。真冬に集まることは、北海道では無理だろう。

 

とにかく、リトリートする時間が持てたことはよかった。日々仕えている現場から離れて自分自身を見つめ直す機会は、自分にとっても必要なことなのだ。

 

講座が開かれている間、毎食毎食、自由な席に座り、居合わせた方とお話することになる。3年前は見も知らない同労の先輩や仲間たちばかりだったのが、いつしか誰とでも気軽に話が出来るようになっている自分に気づいた。

 

そしてまた、食事が切っ掛けで久しぶりの仲間たちと大笑いしながら過ごせるとは、すこぶる健康的なことだと思う。

 

最終日の朝食時、私はテーブルを梯子して歩いて、会話が弾んで盛り上がっている席に加えてもらったりという具合だった。

 

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今回の教職講座。

 

主題講演をされたのは静岡県の伊豆半島に位置する松崎教会と南豆(なんず)教会を兼牧される星野正興(まさおき)牧師だった。両教会はJRが通っていない過疎の地域にある。

 

星野先生のほとんどの著書は親しみやすい内容でありながら、私は骨太なものだと思う。

 

これまで大いに教えられ、考えさせられ、心の奥深い所に何かを様々な形で与えてくださる存在だった。

 

だから、以前からぜひ一度お目に掛かってお話を伺いたいと願っていた方だった。70代に入って居られる星野先生。勝手に想像していたよりも小柄だった。

 

ほぼ完全原稿を読み上げる形のお話のスタイルにも驚いたが、長年の積み重ねの中でそこに到達されているのだろうと察した。姿勢がよくて、芯がぶれないうちに秘めた強さをずっと感じるお話し振りだった。腹式呼吸を心掛けてお話すると言われる星野先生の声は聞き取りやすく無駄がなく、その点でも教えられた。

 

最終日、参加した牧師たちの感想や思いを一通り聴いて下さったのちに、星野先生は口を開かれた。そのひと言ひと言は、我々参加した者たちを信頼しての、「傷ついた癒し人」として日々の歩みについてだった。一同、黙って深くかみ締める言葉を聴かせて頂いた。

 

生身のお人柄に触れられて、今後、星野先生の本を読み直す楽しみが増したと感じる。

 

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教職講座終了後、わたしは札幌に向かった。昨年7月、大地主(つまり「痔」ですね)脱出の為の手術を受けたのだが、その後の経過を診て頂く必要があった。

 

傷もなく、きれいですよと院長先生のお言葉。つまり完治しているということ。安心した。

 

その後、金曜日から土曜日に掛けては一日の休暇を頂き、洞爺湖方面に向かった。定山渓という札幌の奥座敷を抜けていったのだが、定山渓の辺りは、濃霧がひどくいささか恐ろしい思いもをする時間帯があった。

 

札幌から2時間も走ると洞爺湖が見えてきた。

 

同労の仲間というのはありがたいもので、教区の宣教研究委員会でご一緒している苫小牧地区・島松伝道所の辻中明子牧師から、洞爺湖の周囲にある「バスでは通れない湖畔の道」の存在を聞いておいて大いに助かった。

 

確かにそこかしこに紅葉の見事な景色が広がっていた。バスは間違いなく通れない。

 

パラパラパラっと、雨が落ちて来るような雲の動きが目まぐるしい日だったが、赤・黄・緑の自然の紅葉のハーモニーを堪能。抱えていったカメラにも大いに働いてもらって、車を停めて降り立ってシャッターを押すことが多かった。

 

夜は夜で、10月の末迄打ち上げられるという花火を洞爺湖の湖上から楽しむことが出来た。これもまた見事だった。

 

稚内の夏の終わりを告げる花火大会の内容に良く似ていたのはおそらく気のせいではなく、同じ職人さん達による仕掛け花火だからだろう。

 

総じて洞爺湖は優しさを感じる湖だった。そして、また出掛けたいと感じた。そして温泉街の規模もかなりのもので、函館にも負けていないのではと思った。

 

学生時代の友人夫妻が勧めてくれた宿に泊まれなかったのが残念だったが、それでもこれっぽっちの不満もございません、の洞爺湖への小旅行一日目となった。

 

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10月18日(土)は1977年に噴火した有珠山の散歩コースを歩いてみた。地元の方の話に依れば、20数年に一度は噴火するからもうそろそろ、とのこと。ホントかいなと思いつつも、その大らかさがまたよかった。

 

昼ご飯は、湖畔で売られていたリンゴにかじりつくことにした。熟れるまで樹になっていた、ほんの少しの傷ものを格安で購入。これがまたうまかった。

 

午後はぜひ一度訪ねて見たと思っていた(前述の)島松伝道所に立ち寄ることにした。島松へ向かう途中、羊蹄山が色々な顔を見せてくれた。

 

島松伝道所では、ご夫妻して癒し系の太鼓判を押せる辻中明子・徹也牧師が待っていてくれた。近く会堂の大改修工事を行うという会堂は、古さのなかに不思議な居心地の良さを感じた。お二人を中心にしての教会作りの賜物だと思う。

 

全国の教会に通信販売されている野菜のおこぼれ?のお土産を手に、夜は旭川に入った。19日(日)の交換講壇に備えた。

 

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19日(日)の午前は、旭川星光伝道所での交換講壇に向かった。旭川の中心地から車で10分ほど。閑静な住宅街の中に立つ星光伝道所。

 

早めに到着すると、礼拝堂では教会学校が行われていて、地区の委員会で顔なじみの若手のご婦人の泉さんが、創世記のヤコブの物語をミニ劇場仕立ての舞台を手作りで準備し、4人の男の子たちに楽しそうに語りかけていた。

 

その丁寧な準備、そして、分級なしという聖書を通しての真剣勝負という潔さにもびっくり。心から拍手だった。泉さんはヤコブがエサウを陥れる、あの創世記のレンズ豆風の煮物もつくって居られた。いやはや感動だった。

 

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午後は富良野にほど近い所にある美馬牛福音伝道所との交換講壇に向かった。旭川星光伝道所と兼務されている清水真理牧師は厳冬期もこの道を毎週1時間以上掛けて出掛られているのだと初めて知ることが出来た。決して近くはない距離。冬場はかなり危険だろうと思う。

 

この日はスンバラシイ晴天に恵まれ、旭川市内からも大雪山系の冠雪がぜーんぶ見渡せる程だった。いつもと違う道を通ったからだろうか。

 

それにしても美しかった。

 

美馬牛福音伝道所での礼拝。午後2時からと思い込んで行き込んで出掛けたところ、勘違いで、2時半からだった。30分の余裕ありと分かったので、2分ほど歩くと到着するJR美馬牛駅に散歩に出掛けた。

 

なぜか駅舎には大きなリースが掛けられている。到着する列車から降りてくる人たちは、皆さん旅人に見えた。

 

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礼拝後のお茶の時間、「森先生、3年ここに暮らしていてもこんなにきれいな山並みは観られないかも知れないです」と教えられた。

 

思わず万歳しそうになったが、それ位、澄んだ空気と青空に恵まれたのだった。帰路、飛行機雲が空に映える特選の夕べだった。

 

かつて新潟・上越の教会に仕えていたが、午後の礼拝をまもっていた新井教会の皆さんとの日々を思い出す時間でもあった。

 

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稚内に暮らし始めてからの私は、写真を楽しむようになった。

 

教会とこの森牧師の部屋というホームページに「写真館」「気ままフォト」なるページをつくったり、ブログをせっせとアップするようになったので、いつしかカメラを手にすることが多くなったのだった。

 

ただ、時々、まぐれでイイじゃないか、と思う写真をとれることもあるものの、素人の腕では限界があることは自分でも分かっていて、誰かに、あれこれ教えてもらいたい、と考えていた。

 

先生役を期待できる方は、周囲に何人か居られるのだが、そのおひとりが、就任式の時の写真を撮影して下さるなどしていたNさんだった。

 

Nさんはキリスト者ではないのだが、お連れ合いの久子さんが稚内教会の古くからの会員で、時々お宅におじゃますると写真の話になることもしばしばだった。

 

例えば最近わたしは花火を一眼レフカメラで撮影しようとするとどうも上手く撮れないジレンマを感じていたのだが、Nさんは、それはそれは見事な稚内の花火大会の写真を見せてくれたことがあった。

 

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ところがである。

 

これからもカメラのことをきっかけにあれこれ話をしながら教えを請いたいと願っていたNさんが9月27日に思いがけず召天された。ご遺族もさみしいだろう。そしてわたしもさみしく悲しい。

 

つい先頃、市内の交差点で信号待ちした時に、後ろに元気な車が停まった。その運転席に見えたのがNさんだったのだから、全くもって思いがけないことだった。

 

Nさんとの交流で楽しかった理由のひとつは、Nさんが稚内の昔のことをよくご存知だったことかなと思う。確か漁師さんの家にお生まれになったはずで、その方面の話もお聞きするのは楽しみだった。いやいやそれどころか、わたしがどなたかに確かめてみたいないなぁというような地元のことに精通して居られたと思う。

 

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今の稚内教会の会堂入り口に立つ立派な礼拝案内版。本当に使い勝手が良く、風雪のみならず強い風雨という稚内の厳しい環境でもビクともしない素晴らしいもの。

 

実はその看板、Nさんと久子姉ご夫妻からの献品だった。2年程前まで、久子姉も看板書きを担当されていたこともあり、わたしが就任して間もない頃に、甥っ子の大工さんとあれこれ相談してくださり日本にここにしかない素晴らしい看板をつくって下さったのだった。

 

今私は、外部からのお客さまをお迎えしたときに写真をその看板の横で撮影することが多いのだが、本当に見栄えがする会堂になっているのは、実はあの看板があるから、ということを私に最近わたしは気づいたばかりだった。看板が会堂に馴染んできたのだと思う。

 

Nさんは天国に行かれた。今しばらくはお目に掛かることもない。

 

悲しく、さみしいけれど、本当に幸いな事は、これからも変わらず稚内教会の礼拝案内を続けてくれる看板がそこにある、ということだと思う。

 

それは、私にとって大きな心の支えであるだけでなく、実に、稚内教会の礼拝を支え続けてくれる礎なのだ。心から感謝しつつ大切にしたいと思う。

 

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数日前、Nさんの甥っ子にあたる同じくN大工さんと立ち話をしたとき、その看板の話をした。

 

Nさんは、月に何回か、早朝、大工さんの工房にやって来て、紙ごみを焼きながらコーヒーを楽しんで居られたと聞いた。

 

「さみしいですね」と大工さんに伝えると、「うん、そうだね。本当にさみしいねぇ」と言われた。

 

「先生、今度、あの看板、木部に上塗りしてくるから」とも言われた。大工さんも、あの看板をたいせつにしたいという思いを抱いて居られるのだ。

 

看板に記される説教をこころを込めて語り続けること、言葉を紡ぎ続けることこそが、今もこれからも、私に責任をもって出来ることだと改めて思う。end

 

 

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