『こんぶ通信 5号 』『 昆布ちゃん あなたの成長祈ってます 』
稚内教会による 福音物語 その5)を以下お届けします。
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カナダ合同教会ロンドン教区のご一行6名が、道北クリスチャンセンター館長のロバート・ウイットマー牧師と圭子さんご夫妻のご案内で稚内教会にお出で下さったのは6月上旬のことでした。
お抹茶を点ててのもてなし、そして、愛餐会もひと段落した頃。わたくし、おもむろに立ち上がりました。
「最北の町稚内へようこそ。ここに皆さんへのプレゼントがあります」。
そう言って取りだしたのが稚内教会謹製・利尻昆布でした。冠雪の利尻富士や昆布漁の様子、礼文島の日没の様子が見える写真も準備しました。
ご一行の中にジェーン・ヴァン・パッター牧師が居られました。
ふと気がつくと、彼女の目がキラキラと輝き、何やらペンを取りだし、メモを始めたのです。メモを取り終えたパッター牧師。満面の笑顔と共に、good!と指をお立になったような記憶。いやいや更に、ウインクもされたのかも知れません。
「もーり-!Thank You!
あなたのそのメッセージ、
わたしのSaint David's UNITED CHURCHの
説教で使わせていただくわぁ(^_-)-☆」
という喜びのサインだったのです。
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その時のわたくし。こんなメッセージを声を張り上げて語りました。
「皆さんへの贈り物の利尻昆布。これは、棚に飾っておいても何の力も発揮いたしません。見ているだけでは、皆さんの心を癒やしてくれることもないでしょう。
昆布は小さく切り分けられ、水に浸かってはじめて本領を発揮し始めます。
洋風のお料理の味も引き立ててくれる昆布出(だ)汁(し)は昆布が水の中に入った時に染み出ます。それは小さなわたしたちが水に浸かること。すなわち【洗礼・バプテスマ】に通じる何かを思わずにはいられません」と。
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最近のことです。関東地方在住のとある先輩牧師から達筆な青インクの万年筆をお使いになったお便りが届きました。かつて、南国の田舎町の小さな教会で牧会しておられた方です。
【『信徒の友』(6月号に拙文を寄稿しました)』と『同窓会報』により、近況を知ることができ感謝です。教会が地域の方々と生きていくためにも「利尻昆布」販売に力をいれて下さい】。
胸が熱くなりました。地元の漁師さんに教えを乞うて取り組んで来て良かったと確信でき、安心いたしました。
また、お料理上手のご婦人からは電話が入りました。「利尻昆布を切らしてしまい、よその昆布を買って来ると、味の違いがすぐ分かります。利尻昆布はそれくらい美味しいです。自信をもって」と。
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わたしたち、利尻昆布を何とか当地の逸品にしようなんていう努力は、少しもいたしておりません。稚内教会がバザーとして扱い始める前から、利尻昆布は既に立派なブランド品のようなものだった、と改めて思います。
わたしたちに深い智恵があったのでもなく、研究に研究を重ねて出発したのでもありません。マーケティング担当者が礼拝出席10数名の教会に居るわけではないのです。
利尻昆布そのものが、素晴しい神さまの賜物。そして隣人となって下さっている皆さんとの出会いがイエスさまの憐れみです。
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今年の2月上旬から4月いっぱい迄、お仕事のため横浜市からお出でになった木村兄というクリスチャンが居られました。
新来者カードに「短期の滞在ですが、わたしにできることがありましたらお申しつけ下さい」と記して下さるような方です。
木村さん、3月のとある日曜日の午後、利尻昆布作業に参加し、その時の気付きを、『あしあと』という文集に投稿して下さったのです。
ご紹介します。
【バザーのための昆布作業等々に参加させていただき、稚内市内だけでなく、北海道内各地、さまざまなところに居られる兄姉とのつながりを見させていただき感謝しました。「利尻昆布バザー」の作業はパウロの天幕作業(*使徒 18:3 パウロは彼らのところに行ったが、互に同業であったので、その家に住み込んで、一緒に仕事をした。天幕造りがその職業であった。)を思わせるものがありました】
と記されました。
わたしたち、いつしか伝道者パウロに通ずる歩みを始めていたのですね。
皆さんも、稚内教会でこんぶ作業をご一緒してみませんか!
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雨はないはずの稚内。気象台の観測が始まって以来の雨量を、6月はじめの僅か数日で越えてしまいました。
地元の新聞に記されるまでもなく、わたくしの心の中でも、「昆布ちゃん、無事に成長できるのかしら」と心配になったものです。昆布を育てるのはミネラル豊富な海であり、お日さまだからです。
でも大丈夫。夏至を過ぎ、7月上旬の昆布漁解禁を前に青空が広がり始めました。
最北の町に生きるわたしたち。利尻昆布の成長を神さまに祈る毎日でもあります。(たぶん)続く。