2014年2月25(火) №119 『 最北通信 稚内教会 牧師室便り 23号 増補改訂版 』

 

※今号、気絶するほどではないにせよ、長いです。お忙しい方、どうぞ、PASSして下さい。遠慮なく。ハイ。

 

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吹雪。

 

その恐さが身にしみて分かるようになった今年の冬だった。

 

昨年11月の自動車の自損スリップ事故で、だいぶ用心深く過ごした冬だった。急発進、急ハンドルはほぼ完璧にしなくなった。

 

春の兆しは見えて来たけれど、きっと荒れる日もまだまだあるだろうから、油断はできない。そして、路面の雪解け水が、早朝に凍り付くことも多いので、それもまた要注意だ。


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九州で育ったわたしたち夫婦。時々、車に乗っていて交わした言葉がある。

 

「昔の人たち、たいへんだっただろうねぇ」と。

 

例えば、私が生まれた昭和35年・1960年頃。つまり半世紀ほど前。ブルドーザーやショベルカー他、大型の除雪用重機は限られていた時代だ。教会や幼稚園の庭は愚か、国道や北海道や稚内市が管理する道路すら、除雪車はほとんど無かっただろう。

 

寒さだって、今と変わらないか、それ以上だろう。

 

「昔は、あたたかくてよかった」なんて声は誰からも聞いたことはない。

 

一体皆さん、どんな風に冬を乗り越えて居られたのか、と考えてしまうことがある。安全のためには、努めて移動を少なくし、保存食を倹(つま)しく食して過ごしていたのだろうか。

 

だから、ニシン漬けが美味しい文化があったり、ホッケの干物が素晴らしく旨い、ということにもなるのかも知れない。

 

吹雪く時には決して無理をせず、自然の変化に合わせて過ごしていたのか。言い換えれば、ひたすら忍耐して待ち続けていた、ということだろう。

 

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一人のきょうだいを天に送った。

 

覚悟していたこととは言え、ご遺族にとってはもちろん、小さな家族的な交わりをたいせつにしている小規模教会の我々にとって、悲しみが雪のように降り積もる感がある。

 

A兄が1月26日に77歳で召天された。

 

A兄は2012年のクリスマスに療養中のご自宅で洗礼を受けた方だった。稚内教会としても久しぶりの受洗者だった。牧師の私からすると、稚内教会で最初に洗礼を授けた、決して忘れられない方でもある。

 

2012年4月。赴任して間もない日曜日の夕方、お宅におじゃまして、にぎり寿司をつまみながらお話をするようになり、訪問がとても楽しみな時間となっていった。

 

「雑談」が「入門講座」に変わり、やがて「受洗準備講座」となった。

 

思い出はうつくしすぎて、とはよく言われることだが、ひとこまひとこまが懐かしく、あたたかい。

 

神さまの備えられた「ご計画」と「時」がそこにあったことを思う。

 

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A兄の洗礼式の時に読んだ聖書。それは、ヨハネ福音書3章だった。そこには、イエスさまと年老いたユダヤ人議員のニコデモの出会いの場面が描かれている。

 

イエスによる【だれでも水と霊とによって生まれなければ、神の国に入ることはできない】(3:8)の言葉を聞いたニコデモは、背を向けて去って行った。

 

しかし、A兄は違った。水と霊とによって新しく生まれ変わり、与えられたそのいのちを輝かせながら生き抜かれ、天に帰って行かれたのだった。

 

わたしはそう信じる。

 

そして、共に歩ませていただいた、信仰の共同体は様々な感化を受け、恵まれた。

 

「キリストが影のようにいつも共に」という恵みの証しに、心新たにされたのは、A兄だけでなく、教会の皆だったのだ。

 

感謝だなと思う。

 

そして、主イエス・キリストにある慰めが、お連れ合いのT姉を始め、息子さんたち、近親の方々お一人おひとり上にあるように、と教会の皆で祈っている。

 

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北海教区にやって来て、「目から鱗」ということが色々とある。

 

そのうちの一つかも知れないが、北海教区名物とも言える、教区の年頭修養会が1月13日(月)~14日(火)に旭川のロワジールホテルを会場に行われた。

 

道北地区が当番となり、1年半近くを掛けて準備して来た会だった。パソコンによる電話(Skype)会議も幾度も行った。何しろ、稚内と旭川は最短で4時間の距離。名寄でも3時間弱かかる。

 

そういう点では、最先端のPC機能は、この道北という地域でとても有効だった。もちろん、顔を合わせて、コミュニケーションをとるに越したことはないが。

 

主催する側として、一番の心配は、真面目に、大雪だった。

 

交通機関が混乱してはどうにもならない。大阪からのメインの講師、子ども年修の東京からの先生と、飛行機が飛ばない場合は・・・と事務局では真面目に代案を考えたりしていたのだった。

 

真の意味で盛会。

 

わたしはそう感じているが、道北地区の仲間たちとの振り返りの時間に、自分でこう語ったことをはっきりと覚えている。

 

「道北地区は、大物の誰かを呼んできて安易に済ませるのではなく、今の自分たちの課題と真っ正面から向き合った。その営みこそが一番貴いことだったと思う」と。

 

信徒も牧師も合わせ、多くの仲間たちとの連帯がグッと深まったことも大きな収穫だ。

 

事務局長を務めてくれた韓守賢先生(ハンスヒョン・旭川豊岡教会)が、年末の夜中の12時頃迄の会議で見せた気迫の顔が忘れられない。先だっての振り返りの会議の時は、別人の穏やかさだった。

 

「Amazonの買物がストレスで増えた!請求が怖い」という韓先生の言葉に、みんな、笑顔でうなずいていた。

 

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主題講演をお願いしたのは、大阪からお出で下さった金香百合(キム カユリ)さんだった。

 

わたしは10年以上前に出会って、本物を実感。

 

この度の修養会の講師を誰にするかで行き詰まった時に、私から推薦させて頂いた方だった。

 

お招きして多くの方たちから、「よかった、たのしかった、素晴らしかった」の声が修養会の実行委員会のメンバーの元に様々な形で届いている、という。

 

しかし、参加者がそこで得たものをフィードバックすることは、実は、簡単ではない。それだけ、実は、本質的な何かを包含している講演だったと思う。

 

金香百合さんから、改めて始めて見なさいと促されたのは「笑顔」だった。

 

金(キム)さんは、みんなのためにそのボールを投げて下さった。

 

参加していた愛する友人牧師は「金先生のメッセージを頂き、帰宅すると妻に必要以上に「ありがとう」と言ってた(本当に)。しかし三日で断念(笑)」と伝えて来た。

 

他にも、「帰ったら、夫に謝らなきゃ」とか、「子どもに、ごめんね」と言った等、知り合いだけでも幾人か居たのだった。それ程、あれこれ気づかせてくれた講演だった。

 

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金さんはキリスト者だけれど、浄土真宗の大切な経典にある「和(わ)顔(がん)愛(あい)語(ご)」という言葉を講演の中で紹介された。

 

いや、実際はその言葉というよりも、テーブルごとの出会いの場で、笑顔で、心から向き合う人のことば、心に聴く姿勢について考えさせて下さった。

 

「和願愛語」とは文字通り「和らぎの顔、いたわりの言葉」を大切にし、いつも穏やかな顔でいれば、心も穏やかになって、心が優しくなること。

 

が、肝心なことがある。

 

実はこの言葉、昨年の11月、金香百合(キムカユリ)さんが看取(みと)られた最愛のお母さまとの貴い最期の日々に、金さんの実生活の中で与えられたものだったのだ。そのことを、わたしはナイトプログラムに参加していて知った。

 

つまり、勉強や教養としての言葉ではなく、お母さまとの掛け替えのない最期の日々に、深く心に落ちてきた言葉だったのだ。

 

今、私も“笑い皺(じわ)”を一本でも増やしたいと願って、努力を始めている。かつて幼稚園の園長として仕えていた頃、笑顔を努力してつくることを実践し始めたことがあったが、今はまた、違う文脈でそうありたいと願う。

 

「泣いて暮らすも一日、笑うて暮らすも一日、同じ一日なら笑うて暮らさにゃ損たい」(『人生は55歳からおもしろいねん』・今井美沙子著・岩波書店の中の、今井さんの故郷、長崎県対馬のお母さまの言葉)

 

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「和(わ)顔(がん)愛(あい)語(ご)」に関連して、面白いことを知った。

 

宝塚歌劇団がらみの話である。

 

宝塚歌劇団の壁には、『ブス25箇条』なるものが貼り出されているというのだ。劇団四季の元団員の友は居るが、宝塚はお友だちゼロ。しかし、どうも有名な話らしい。

 

『ブス25箇条』の一番バッターが「笑顔がない」なのだが。

 

ちなみに、25箇条は以下の通り。


1)笑顔がない。
2)お礼を言わない。
3)おいしいと言わない。
4)精気がない。
5)自信がない。
6)愚痴をこぼす。
7)希望や信念がない。
8)いつも周囲が悪いと思っている。
9)自分がブスであることを知らない。
10)声が小さくいじけている。
11)なんでもないことに傷つく。
12)他人に嫉妬する。
13)目が輝いていない。
14)いつも口がへの字の形をしている。
15)責任転嫁がうまい。
16)他人をうらやむ。
17)悲観的に物事を考える。
18)問題意識を持っていない。
19)他人につくさない。
20)他人を信じない。
21)人生においても仕事においても意欲がない。
22)謙虚さがなく傲慢である。
23)人のアドバイスや忠告を受け入れない。
24)自分がもっとも正しいと信じ込んでいる。
25)存在自体が周囲を暗くする。

 

「いつも口がへの字の形をしている」にはドキッとする。忘れちゃいけないのは「笑顔」が最初に掲げられている事だろうか。

 

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インフルエンザが稚内でも流行(はや)っていた2月9日(日)明けの月曜日。嬉しいメールが遠方から届いた。

 

稚内教会が昨年の9月から始めた礼拝のライブ配信が、札幌と東京のクリスチャンのお役に立っていたことがわかったのだ。

 

これ、録画の視聴ではなく、生中継への反応だ。

 

一人は元・稚内教会の会員で札幌市在住のI姉だった。ご自宅で静養中にふと稚内の取り組みを思い出されたとの事。

 

もうお一人の方は面識はないがこのような丁寧なメールをくださった。

 

「東京都〇〇市にあります日本基督教団〇〇教会の〇と申します。思いがけず生まれて初めてインフルエンザにかかり、礼拝に出席出来なくなりました。それでどうしたものかと思い、ネットで調べ、御教会の礼拝に自宅から出席させていただきました。・・・・・お働きのうえに、聖霊の祝福とお力づけが豊かにありますようお祈りいたします。今日はどうもありがとうございました。」

 

という内容だった。

 

この方、稚内教会が行っている、利尻昆布バザーの品を購入して下さっている教会の方と知り、重ね重ね感謝だった。嬉しいことだと素直に思う。

 

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雪と氷、そして吹雪に見舞われる2月の稚内。

 

数年前からの恒例となっているという、サハリンからのロシア民謡と舞踏(ぶとう)のアンサンブル「ルースキー・テーレム」というグループの舞台を楽しんでいる。

 

年々、中身が良くなって来ているという評判で、わたしは去年その存在を知ったのだけど、無料で、本当に気軽に「副港市場」という施設の特設会場に出掛けては、厳冬期の気分転換をしている。

 

写真もvideoも撮って、我が家はこの季節、ロシア民謡が溢れる。ロシアの人々の大らかさが伝わって来るステージで、ほんと、恵まれていると思う。

 

彼らは観客がパラーっとしか居なくても、一切抜いたところは見せない。歌うことが楽しく、踊ることも嬉しいのだ。

 

いつも心からの笑顔の彼らは、まさに「professional・プロフェッショナル」。

 

「ハラショー・素晴らしい」「スパスィーバ・ありがとう」と大きな声で叫び、力いっぱいの心からの拍手を送り、春を待っている。end

 

 

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