2013年10月25日(金)№86  『 御国へ 奥さまと呼んでくれた女(ひと) 』

 

かつて、仕えさせて頂いていた、新潟県上越市の教会からの電話が入った。現任の、誠実で年若い成田牧師の声が聞こえると、わたしは少し身構えることが多い。

 

「森先生ですか。成田です。悲しいお知らせがございます。○○トモ子姉が召されました。前夜式は・・・、告別式は・・・」と日程をお知らせくださる。わたしはペンをとり、メモを記す。

 

連絡をくださって恐縮であり、また、ありがたいこと。同時に・・・・さみしさが募る。

 

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伝わって来た話に依れば、1年半ほど前から闘病が続いておられたトモ子姉は、つい先だっての10月13日の礼拝に、御主人のK兄に寄り添われて、車椅子で礼拝に御出でになったとのこと。

 

そしてその日、『主われを愛す』を捧げられたそうだ。御主人や教会の皆さんが見守る中の独唱だった。

 

あらためて『主われを愛す』の歌詞を見直してみた。歌われたのは1節~4節だが、少し抜粋してみる。

 

(1)
主われを愛す、主は強ければ、
われ弱くとも 恐れはあらじ。
わが主イェス、わが主イェス、
わが主イェス、われを愛す。

 

(3)
みくにの門を ひらきてわれを
招きたまえり、いさみて昇らん。
わが主イェス、わが主イェス、
わが主イェス、われを愛す。

 

そう、『主われを愛す』は、こどものさんびかなどではなく、御国への凱旋の希望を歌う賛美なのだ。

 

余命を告知されていて、終わりの時をハッキリと自覚しておられての、さいごの捧げものだった。

 

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トモ子姉は独学で研鑽を積まれた方だった。

 

上越の城下町・高田でピアノの先生をされて多くのお弟子さんが集い、伝統ある合唱団ではソプラノを長年にわたってリード。教会の中越地震復興チャリティーコンサートでは御主人と共に歌ってくださった。

 

ドイツ語の辞典を片手に、バッハの楽曲に取り組まれ、奏楽を担当される前の平日には、しばしば、独り静かに礼拝堂に身を置いてリードオルガンのペダルを踏んでおられた。

 

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わたしの妻のことを、多くの方はわたしが呼ぶように「みきさん」と名前で呼んで下さるのだが、トモ子さんは、昨晩妻がぽつりぽつりと語ったところに依れば、一度たりとも、「みきさん」と語りかけることはなかったそうだ。

 

「奥さま」

 

まだ、小娘のようなところのあった年若い牧師の連れ合いに対して、そのような敬意をもって接して下さったこと。わたしたちがそれを望んだり、そうしてほしいと願うことなどなかった。

 

お孫さんが「みきさーん」と言ってじゃれてくると、真顔で「奥さまでしょ・・・」と確かに叱っていた。

 

しかし、そうして下さることによって、わたしたち夫婦は何かを育てて頂いたのは間違いのないこと。

 

トモ子さん。

 

お砂糖が安いというスーパーのチラシが目に留まれば、「そこに駆けつけ」るという良妻賢母でありつつ、同時に、時にむちむちのドレスをビシッと着込んで背筋を伸ばして歌われた。

 

その姿は、つねに、凜として美しかった。そして、古風な女(ひと)だったのだ。

 

****************

 

「先生、わたし、ちっとも上手くないんですよ」

 

トモ子さんは、オルガンを前にして、幾度もそう口にされた。

 

神はそのようなトモ子さんを愛し抜かれたのだ。

 

そして、最期までその招きに応え続けながら、御国へと召し上げられていったことを知り、わたしは心からの感謝をみ前に捧げる。今、神の御ふところには、トモ子さんがしっかりと抱かれていることを思いながら。

 

ハレルヤ ハレルヤ との声が 御国で響き渡る。そして、わたしのこころの中でも。

 

明日の朝9時より、上越・高田では、トモ子姉の告別式が執り行われる。end

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