2013年10月1日(火)№80 『 道北、そして宗谷で“道”を伝えるために 』

※警告
 長文につき、体力の落ちている方は遠慮なく「パス」をお勧めいたします(苦笑)

 

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それは18歳の時だった。北海道の広さを初めて肌に感じた時のことである。

 

とある事情があって、名古屋空港から千歳空港に向かうプロペラ機・YS11に乗った時のこと。もう、35年前のことになる。やれやれ。そのうち半世紀前になってしまうな。

 

窓辺から陸地が見え始めて、着陸は近い、と思い込んでいた。ところが、さにあらず。

 

フワァー、フワーと上昇と下降を繰り返しながら、これでもかぁ、という位にジラシにじらされて、ようやく空港に着陸したときは、ほとほとマイッタのを覚えている。30分位あったように感じた。とにかく、真っ青を超えて真っ白になった。

 

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北海道に暮らすようになるまで、移動のための時間的な感覚と距離感、あるいは、冬の季節の移動事情の厳しさというのは、実のところハッキリと分かっていなかった。

 

経済評論家でテレビにも最近はしばしば出ておられると聞く・勝間和代さん。彼女のメルマガにある時に記されていて、そうだよなぁと思うことがあった。

 

彼女は道東の北見にしばしば利用する家を構えているそうだが、北海道の広さを知らない友人から、「札幌から稚内、車で日帰りするとどのくらいかかる?」

 

あるいは、

「北海道行くんだけれども、2泊3日で、小樽と、知床と、釧路くらい回れる?」

という類いの問合せが、しばしばあるというのだ。

 

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車や列車で移動するわたしの場合はどうか。

 

例えば、片道170キロ離れている名寄まで、日曜日の午後から出掛けて16時の会議開始に滑り込む。数時間の会議を終えて、夜中に戻って来る気持ちには今はなれない。

 

せっかくだから、他の用も重ねることを考える。

 

例えば、名寄市立病院に行くとか、誰かのお見舞いを考えるとか。あるいは、通り道に、かつての稚内教会の会員のお宅があればお話を聴こうか、とも考えたりする。

 

先日は、いまだ会堂の中に入ったことのなかった士別教会を訪問した。その模様は、教会の日記・ブログに記している。

 

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士別の難波牧師と、先日の日曜日の年頭修養会の会議が終わってから、お互いのcool downを兼ねて、あれやこれやと話しをしていた。

 

その時に難波牧師が言われた。

「この広大な地域での伝道をどうすればいいのよ。これからさぁ。稚内から名寄まで170キロでしょ、半端じゃないよ。間に教会無いんだから。これまでの歴代の先輩方は並並ならぬ努力をされてきたと思うし、宣教師もすばらしい働きをされた。だけどね・・・」

 

「そうだよね、、こういうロケーションは、日本でも他にはないよなぁ・・・」

そんな言葉を交わした。

 

難波牧師が道北に暮らすようになってから10年は過ぎているのだと思う。士別は内陸だが、お互い小規模教会である。これからを考えるときに、はたして、20年後にどうなるか。

 

冷静に考えると、とてつもない変革が求められる時期に差し掛かっていることがわかる。

 

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難波牧師は、今年の8月から三浦綾子記念文学館での職員としてのお働きを兼ねて仕える日々をお過ごしだ。キリスト教と深いつながりのある文学館とはいえ、平日は教会外のお仕事に早朝から集中し、さらに、週末にご自身の教会の一切の切り盛りをするそのエネルギーと根性には、ただただ頭が下がるばかり。

 

先頃、稚内教会が取り組みを開始した、「Ustream」を利用しての、礼拝ライブ及び録画配信も、彼の熱心な取り組みから多くを教えられてのもの。惜しむことなく様々に助言を頂いた。それどころか、利尻昆布バザーについても、要所要所で、励ましの言葉を掛けてくれたものだった。

 

ちいさな、声なき声にこころ傾ける思いを持って、これからも頑張ろうね。礼拝配信も、今の時代にぜったいに、意味のある取り組みなんだからさぁ、というような事で、日曜日の遅くに別れた。

 

あっ、礼拝の中継についても、固有の「あの、一人の人」のことを考えながらの取り組みだということも互いに共通していた。

 

難波牧師は、ある親族のことや、年を重ねたときの自分が、やがて礼拝に出席できなくなった場合を考えると、毎週礼拝することが当たり前だった人間が、それにあずかれなくなって、2,3ヶ月に一度の牧師の訪問を待つなんて、とても耐えられないと思った、とも話してくれた。

 

まったくその通りだと思う。

 

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わたしが献身した時に学んだ神学校から『学報』が届いた。興味深い記事があった。

 

夏期伝道実習を受け入れられた山口県にある小郡教会の金澤正喜牧師が、その報告の文章で、踏み込んだ発言をしておられる。

 

少し、引用・抜粋しよう。

 

無牧師の教会が金澤牧師ご自身の居られる地区をはじめ、近隣にも幾つかあることを触れられたあと、こう記しておられる。

 

これは少子高齢化に伴う信徒数の減少により、無条件での牧師招聘が困難であることを示している。小郡教会も例外では無く、求道者たり得る新来会者が0(ゼロ)という年が何年も続いている。その情況の中で、これからの特に地方の小規模教会は、教会の将来像をどのように描くかが課題になって行くであろうし、そこに遣わされる牧師は、自らの生活設計を含めた「教会経営」の問題に直面させられる事と思う。信徒の献金によって支えられる教会という観点からは、これが大きな教会問題にもなるであろう。

 

その金澤牧師の元で実習を経験された神学生の方は、このように、関連する報告で記して下さった。驚くべき柔軟な対応で、山口の教会の群れは今を受け止め、ふみ留まろうと努力されていることを知ったことを、素直に報告してくれていて有り難い。

 

小郡教会では、山口市にある結婚式場での結婚式を担っています。これは近隣の教会(牧師)と協力してなされていることでもあります。ごくまれにその司式の時間が主日礼拝と重なり、牧師不在となることもありますが、教会が互いに支え合って、それぞれの礼拝が守られています。ここで大切なこととして覚えておきたいのは、牧師が地域で結婚式の司式を行うことを教会の伝道の業として取り組んでいるといこと、そして役員会でまた教会全体でそのことを確認しているということです。

 

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わたしも昨日の午後、あるホテルの結婚式の打合せをしに出掛けて来た。いわゆるチャペル式(キリスト教式)の結婚式のみならずのようだが、結婚式の数が減少しているため、今後の結婚式の新しいプランについての相談だった。

 

教会のためにもなるかも知れない、と感じることを、もしも検討が可能ならばとホテル側に提案をしてみた。それは、山口県にある諸教会の取り組みと、考えて見ると、深いところでは相通じている提案だったのかも知れない。

 

以前から気になっていたが、稚内市内のホテルや結婚式場には、礼拝堂=チャペル、というものが存在しない。さらに各地の都市に当たり前に散見する専門の“wedding hall”もない。それほどマーケットは少なく、過疎が確実にすすんでいる。

 

ということは、わたしたちの“ホンマものの教会”は、もう少し前向き、かつ柔軟に考えれば、何かを提供できることもあるのかも知れない、ということではないだろうか。

 

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数日前、夕張市は1万人の人口を切ったというニュースが流れていたが、稚内の約3万7千人の人口も、毎月30名減少は相変わらずで、3万人を切るのも時間の問題だろう。

 

稚内市内での最近のある調査に依れば、稚内の結婚を希望する若者たちの6割程は、ちゃんと結婚式を挙げたいと考えていることを知った。

 

さらに驚くべき事に、その75%を超える方たちが、ウエディングドレスを着てチャペル式の結婚式(=キリスト教式という意味ですね)を挙げたい、と考えているというアンケート結果も伝わって来た。

 

なるほどなぁ。そうなんだよなぁと思う。

 

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山口県の小郡教会の金澤牧師が記されていたことば、

小郡教会も例外では無く、求道者たり得る新来会者が0(ゼロ)という年が何年も続いている。

 

これは、他人事ではない。さまざまな努力をわたしたちも続けているのだけれども、大都市の教会に毎週必ず現れる、あるいは、時々現れる、いわゆる求道者の方の姿は、そう簡単にみることはできない。

 

もちろん、礼拝においでになる方だけが、伝道の対象というわけではないし、ぽつり、ぽつっと感じられる手応えも、大きな声で言うほどではないけれど、あるのは確かだ。

 

今、礼拝においでになる方たちが、わたしも含めて、そのまま10年後に、同じ姿で礼拝を守ることが出来るわけではない。そのことをイメージするのは、それなりに“しんどいこと”だ。

 

でも、備えは必要だろうし、最善を尽くしていきたいと思う。そうせずにはおれない。そんなことを思う。あきらめてはいない。end

 

 

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