2013年08月31日(土) №72 『 増補改訂版 牧師室便り No.17号(8/25発行分) 』

 

長文であります。時間と体力が無いときは、PASSして読み飛ばしてくださいませ。

 

冒頭から“お尻”の話で恐縮だが、7月24日、ここ一年の悩み事だった〈痔ろう〉の手術を札幌の日本でも有数の専門病院で受けた。このBlogでは、No.58から一連の出来事を記している。

 

最近、「もりセンセイ、痔ろうだったんですかぁ」という言葉を、元・看護婦の方から(看護師時代以前の世代)話し掛けられた。印象としては、「そりゃ大変だわぁ、センセイ」ということだったように思う。

 

確かに、お世話になった病院の理事長先生も、一番やっかいな手術の一つと記されていたと思う。

 

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既に、一ヶ月以上が過ぎ、胸を張って“お尻美男”になりましたよ、と報告したいところなのだが、実は、完治したという実感はまだない。

 

先頃、通院のために札幌まで(初めてのことだが、飛行機を利用して一泊二日で行ってきた)出掛けたのだが、その時までは化膿止めを塗ったガーゼ交換が続けることが義務付けられていた。

 

重ね重ね、びろうな話で申し訳ないが、病院用語で「お便」が出れば、シャワーが望ましく、そのたびに、化膿止めの薬をガーゼに塗って“処置”する日々だった。7日間の入院で済んだ分は、自己管理が必要というわけだ。

 

退院後、円座を幾つも購入したり、ある方からはプレゼントして頂いて、円座を使わないとこの間まではそれなりの痛みがあった。それであまり出歩くこともせず、静かに暮らしていた次第である。

 

それにしても、夏でよかった。冬場の傷口の管理は、この稚内ではかなり大変だっただろう。機会を逃さず手術へと送りだしてくださった教会の方々、そしてまた、様々な形でお力添えくださった方が現れて、ただただ感謝である。

 

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退院後最初の日曜日は8月4日だった。

 

北海道をぐるーっと自家用車で回っておられた、大阪からお出でになった〈名越さん〉というわたしと同じ年の男性が礼拝に出席された。

 

週報やら牧師室便りに「痔ろうの手術をしました」と記していたこともあり、名越さんは、親近感をもってくださり、ご自身も30年ほど前に同じ痔ろうの手術をされたと語りかけてくださった。

 

もちろん名越さんのお人柄もあるとは思う。しかし、クリスチャン同士の親しさにも増して、一瞬にして心の中の壁が無くなり、礼拝後の会話が弾んだ。

 

名越さんを通じて思い出したことがある。

 

それは“病者の一体感”のようなものだった。子どもの頃からスポーツマンを自認していたわたしであり、今もはたから見れば何の苦労もなく元気そうに見えるわたしなのだが、実は、かなりの回数と日数の入院を経験してきたのだった。

 

特に、20代中頃には度々、大型のスーツケースをゴロゴロと転がしては、東京・お茶の水にある順天堂大学附属医院やその関連病院。はたまた故郷大分市の病院などに長期の入院生活を繰り返して居た。

 

そして40歳になる前にも一度、消化器内科系の病気で長期入院をした。幸い今は(本当に奇跡的に)完治したと言える状態なのだが、特に20代の頃は、何度も心が折れたものだった。自分の努力で何とか道は拓けるものと思い込んで生きていた者にとって、全く思うとおりにならない慢性疾患。本当の意味で挫折を知ったのもこの頃だった。

 

死を意識し始めたのもその頃のことだ。闘病と言ってもオーバーではない感じの時期を過ごしていたと思う。

 

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もう一つ、今となっては、牧師として得難い経験をさせて頂いたものだと思うことがある。

 

40代後半頃、眠れないなんてことが全くなかった人間だったのに、不眠に苦しみ始めたのだった。振り返ってみれば、その当時は猛烈なストレスが多方面から押し寄せて来たようで(忙しくもあり、緊張感もあって病気という実感はなかったのだが)、すでに、病気だったのだと思う。

 

不眠=病的な状態という判断を当時は自分ではできなかった。普段からお世話になっている内科医から頂いた入眠剤。幾つか重ねて飲んでも眠れなくなってしまった。

 

とうとう、年の暮れに妻と映画を観ていたときに、自死していった仲間とか教会の方たちのことばかりが目の前にグルグルと動き始めたのだった。

 

映画が終わった瞬間、妻の手を握「助けてくれ。恐い」という意味の事を口にし、大型ショッピングセンターの中のロッテリアで、手を握っていてくれと頼む状態だった。

 

その後、とても恵まれた開放型の素晴らしい病院を紹介して頂き、さらには、優れた医師の助言を受けながら休息を取ることになったのだった。本当にいい経験となったと思う。

 

心の病を経験し、症状は違っても多くの方たちと病院で出会えて、静かに人生を見つめることができるようになったのだった。ある時期には、入眠剤を3種類、そして安定剤を2種、更に、弱めのものだが抗うつ剤も必要な時期を過ごした。

 

主治医は「働きの場を変えれば、森さんは必ず元気になる」と断言されていたのだが、本当にそうだった。稚内に暮らし始めてからは正に嘘のような話なのだが熟睡し、かつ、基本的には不安も何もなくなってしまった。悩みがないというわけでは決してないが。

 

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こうなるとわたしの場合行き着くのは、病床での洗礼、あるいは、病気をしたからこそのキリストとの出会いということになる。回り道や遠回りは、通らなければならぬ必然だったということを思い起こさせてくれるのが、わたしの場合、病であり病院なのだ。実に不思議だ。

 

簡単には実現はできないけれど、稚内教会に幾人も居られる非常に困難なご病気の方々、そして、介護や寄り添いの日々の方。あるいはペットロス、更には、大切な方を天に送られて悲嘆や痛みを抱えている方々が気楽に語り合える集いがあれば、有意義だろうと思う。

 

かつて仕えていた教会では、グリーフケアの集いを定期的におこなっていたが、時が来て導きが示されれば、当地に於いても、そのような場を提供できるようになりたいものだと思う。ただし、ハッキリと申し上げられるのは、「わたしは救えない」ということである。

 

ピアカウンセリングという方法があるが、まさに、同じ経験をしたものだからこそ聞き役になれたり、寄り添いができるということがある。そのような働きが自然となせる教会、交わりが生まれる日を待ち望んでいる。

 

来客者が増えた夏。秋を前にそれを実感している。礼拝にお出でくださる旅人が、去年よりも確実に増えた。こまめにホームページのBlogや写真館を更新していて、最北の町にも教会あり!と発信していることも良かったのかも知れない。

 

そして、傷ついている者が多くいる教会だからこそ、提供できる何かがあるのではないかと思うのだ。多くの人々に慰めと深いところでの癒しを指し示す働きを続けたH・ナーウェンという方が居られたが、彼が記した幾つもの本を思い起こす。

 

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最近の我が家=牧師館。妻の美樹さんは、夕飯の片付けと朝食の段取りが終わったあとに、何やらモソモソと動き始めることが多い。手強いカニの甲羅や足もパキンと切り落とせる料理バサミで、利尻昆布を1リットル入りのボトルにパラパラと切り落とし、水を入れているのだ。

 

こんぶバザー開始時に大慌てで作った昆布関連の小冊子に載っているが、大阪の昆布問屋の社長さんが発見した《こんぶ水(すい)》仕込みをしている。多分、もう、やめられないのではと思う。それ程、こんぶ水を使うと料理がうまいのだ。

 

利尻昆布を縦5㎝前後、幅は1-2㎜程に10グラム分を切り刻む。そしてボトルに1リットルの水を入れて冷蔵庫に保管するのだが、それが、例えば和風スパゲティー、味噌汁、ご飯にも、煮物にも、いえいえ和洋中の全ての料理に力を発揮する。料理の味がマイルドで、美味しいなと思うと、必ず、昆布水が入っている。

 

利尻昆布おそるべし。いやいや万歳なのだろう。食が進んで困る。少しも痩せられない。

 

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7月中旬より、漁師さんによる昆布漁も再開。徐々に昆布が入荷し始めている。それを受けて、しばらくstopしていた「利尻こんぶバザー」が動き始めた。

 

各地の皆さんに愛され、末長く続けるための一つの鍵が最近みえてきた。それは一度きりの購入ではなく、とにかく使って頂かなければ、利尻昆布のおいしさと奥深さは絶対に伝わらないということだ。

 

リピーターが生まれるか否か。それが昆布バザーを続けていく鍵だろう。そのような助言も遠くから頂いたりした。もちろん、謙虚に、喜びをもって、何が一番の目的なのかを見失わないようにしなければならないが。

 

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それにしても昆布に関わる働き。実に奥深いものを感じている。昆布は捨てるところが全くない、とよく言われるのだが、正にこの働きを通じての出会いや気付きは深いものがある。

 

人生学ぶに終わりなし。

 

自分でもまさかこのような働きに仕え始めるとは思いもしなかったというのが本音である。神さまってすごいなと思うのである。end

 

 

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