③からの続きです(①②③、特に、②以下を先に読まないと???かと思います、悪しからず)
ナースステーション奥の間に移動し、まーるい穴あき座布団(肛門が痛みません)を敷いた椅子に座ったわたし。リーダーの看護師さんに語り始めた。
「かくかくシカジカでですね、やっぱり、わたし、おかしいと思うんです・・・看護の“看”は“ね、“手”と“目”で・・・でしょっ!」(5分経過)「森さんのお気持ち、よーくわかりました」(と言ったかは、なぜか、あまり覚えていませんが、大体そんな感じです)
リーダーは「今後はそういうことの無いように、徹底いたします」という意味の事を言われたと思う。その頃には、わたしの持って行きようのなかった気持ちは、ほぼ納まっていたし、もういいやと思っていた。
何より、個人的には、看護師さんもある意味被害者だったのではと感じ始めていたのだった。
そして、あんまり大人げないことを言っていると、恥をかくのはわたし。ましてや入院前の問診表になぜか職業欄があって「団体職員 牧師」と書いていたことが頭をかすめる。
「あーあ、やっぱりキリスト教の牧師なんてろくなもんじゃ無いわ」となるのも不本意ではないか。でも、言わなきゃ分からないこと、伝えてあげなきゃ伝わらないことってあるのも事実だろう。
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「それじゃ、失礼します」
と、わたしは立ち上がったときに、姿を現した小柄なお方が居たのだった。
「わたくし、師長(婦長)の○○と申します。今、リーダーに森さんがお話しになっていたこと、全部ここで聞かせて頂きました」(ドキッ)
「ぜんぶ、森さんのおっしゃる通りです。言って下さって、本当にありがとうございました」と語りかけて来るではないか。そこで話を聴いている人が居るとは全く気付かなかったわたし。制服の人の往き来だけは感じていたが・・・。
師長さん。やや紅潮した表情で続けられた
「モリさんは二つのことを指摘下さいました。一つは医師の問題。インフォームドコンセントですよね。それが出来ていない。もう一点は、看護師の対応の問題です」と。
小柄な師長さん。でも、存在感はありあり。例えて言えば、女子バレーボール日本代表・ロンドンオリンピックの名セッター・竹下選手風。
「森さんの声の下には、黙って居られる10倍以上の方の思いがあると思います。医師の方のことは、明日から、直ちにというわけにはいかないかも知れません。でも、看護師のことについては、言って下さったことを決して無駄にはしません。徹底しますので。それから【院長直行便用紙】というものがありますから、ぜひ、お記し頂いて、ポストに入れて下さい」
師長さん。概ねそのように言われたのだった。
うーん、これに似たことが以前もありましたねぇ。
とある九州の開院間もない内科胃腸科クリニックで、夜の7時迄は診療だからと6時59分に飛び込んで行ったとき、何と「本日の診療は終了しました」の札が下げられていた。
診察室に入って既に面識のあるわたしは「院長先生、オカシイデスよ。何とか間に合わせようと思って走ってきたのに・・・。19時迄の診療だから・・・」とひとしきり語った。
すると院長先生、近づいてきて耳もとに小声でこう言われた。
「森さん、ありがとうござます。言って下さって。助かりました」と。
大人の世界ってこういうのなんですなぁ。いやあーねぇ。
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時は流れて翌日、朝の回診の時間である。
間もなく回診の案内があってからしばらく経っても、403号室に先生ご一行がお出でにならない。何やら遠くで声は聞こえる。
そう、各部屋をご一行はゆっくりと進んでいる様子だ。
この日は、回診に来られたドクターの傍らに、師長(婦長)さんとリーダーのお二人が何故かびしっと立っていた。毎回そうなのか。いや違うのではないか。
ドクターは気のせいか神妙な表情をしているかに見える。そして、わたしにもしっかりと顔を見せて、十分な時間を費やして下さった。その後も、以前からどうしても確認しないと不安を感じることがあったので、あらためて時間をつくってくださり、別室でじっくりと相談を聴いてくれた。
午前の手術が終わったあとのドクター。
もしかするとここまでツラツラと記してきたことを詰問されると思っていたのか、いや、もともと恥ずかしがりなのかしら、との印象もある先生だった。やや顔を逸らし気味だ。
先生緊張させてごめんなさい。もうわたくしの方からは、これ以上何もありません。
人の振り見て我が振り直せ。
いつも忙しそうな牧師センセイ。それはいかんよなぁ。
そんなことを思う “元・おおじぬし”なのであります。end 本編終了なり