Wikipedia (ウィキペディア)で『稚内プレス』を引いてみるとこう記されている。
稚内プレス社は、北海道稚内市内で『稚内プレス』を発行する地方新聞。A4判、日刊発行、月額500円。国内では日刊発行で最安値。
この『稚内プレス』を我が家ではとっている。毎日夕方前に「猛吹雪でも、オレは一歩も引き下がらんよ」的な空気を内に秘めていると感じる、心優しいおじさんが配達に来てくれるのだ。
教会から牧師館に戻っての一日で一番ほっとする夕食前後に、『プレス』(ここからはこう略します)を眺めながら過ごすのが日課だ。大手新聞社の記事を読む時間がなくても、これなら、さっと目を通せる。
他にも『日刊宗谷』がもう少し格上の感じで発行されているのは、無論承知しているのだが、我が家の「the Minister of Finance =財務大臣」は決して首を縦に振らない。ま、あったとしても、地元紙二つに(お金を無駄にしないようにしっかりと)目を通すのは時間的にも無理だと思う。
で、『プレス』には、“漁師の町稚内"とも言われることがあるだけに、地方卸売市場にその日に荷揚げされた魚の種類と漁獲量が必ず記されているのだ。
これがなかなか面白い。お魚の買い物のhintがもらえるのである。そしてそれ以上に、この情報を仕事柄確認する必要がある方たちが、稚内周辺には何千人か居られるとみえる。赤カレイ六百四十四箱、ツブ三百四十八箱、ボタンエビ百九十一箱という感じである。
5月11日号・土曜日(配達は5/10・金)には、そのたぐいの見出しとしては大きめにこう出ていた。
【ホッケ今年最多5千箱 10日の地方卸売市場】十日、地方卸売市場にホッケだけで四千九百十九箱(一箱十五キロ)の上場があった。沖底漁船として今年最高の水揚げ。
注目は、ホッケだ。
実はわたし。稚内の皆さんが「ホッケ最高だわぁ」「いゃ、やっぱ、ホッケしょっ」みたいな会話を交わしていても、心の中で、「ほんとにホッケがうまいのかねぇー」「あれは、貧乏学生だったころ、居酒屋で、安くて、でかくて、腹持ちする魚だった。でもさ、味はねぇ・・・」と決め込んでいた。
比較的最近も、「○○さんから、ご主人が自分で開いて干して冷凍していたホッケを頂いて、あなたが留守の時に食べたら、すごく美味しいよ。食べてみたら。わたしは食べるケン・・・」と言われても無視。
「オレは、いらん。アジの開きか秋刀魚の開き。イワシの目刺しあったんじゃない?」と言っていた。
ここではっきりと“懺悔の告白"をしなければなりません。縞ホッケの干物、最高! これからはどんどん食べます。はい。もう二度と、「アジの開きがいい」等と申しません。
今振り返って見れば『プレス』にホッケ今年最多・・・・と出ていたあの日の夕方、あるご婦人から、「先生、これ食べてみて。美樹さんいないっしょ、孫にも焼いたから・・・」と言ってお届けを頂いたのだった。
そして、さして期待もしないまま、夕飯の時「うーん、ホッケかぁ。ま、たまにはいいかなぁ」(スミマセン)等と、傲慢な気持ちで、ホッケちゃんを摘まみ始めたのだった。
む、むむむむっ。うぅー、こ、こ、これ、うまいじゃないか。脂ののり工合、ほんのり焦げた皮と一緒に頂いたら、さらに旨さ五倍。いやー、おそれいりました。
今、キーボードを打ち込みながら、そのときの味を思い出していると、じんわり唾が出てきてしまうのである。恥ずかしいなぁ、まったく。
産地のものは、やはり味が違う。これホントです。「函館で食べる新鮮ないかの刺身は、せんせぇ、ほんと美味しいんですよ」とあるご婦人がお話してくれたのは先週の水曜日だったか。聞き流していたが、やはりあれは、本当だろう。
考えて見れば、わたくし=もりげんいちろう。稚内では知られていないかも知れないのでありますが、関東以西では、ある程度の知名度があり、今ではそれなりのブランドにもなっている「関アジ・関サバ」の産地で育ったのでした。
市場には持っていかなかった「関アジ・関サバ」を、自転車に乗った漁師のおばちゃんが売りに来て、その新鮮な「関アジ・関サバ」の刺身を当たり前に口にしていたのである。
そう、わたしは、大分県の田舎の海岸の村で育った小僧なのである。だからして、そう、魚の味は、都会の方たちよりは、かなり分かる人間のつもりでいる、というわけである。
ホッケのこと。はっきり言って、なめていました。本当にゴメンナサイ。やはり、地元で取れるものはこれからも謙虚に、そして、ありがたく喜んで味わって見るべし。新たに深く悟らされた出来事となりました。
皆さま。稚内、そして、利尻や礼文にお出での際は、縞ホッケ。ぜひぜひ召し上がってみてください。ウニやカニよりも感動は大きいかもであります。
あっ、なお、わたくしに届いた縞ホッケ。タップリ大根卸しが添えられておりました。やはりこれも欠かせないようです。いやー、夜の夜中に再びお腹が空いてまいりました。end