9月9日の日曜日、お茶の時間も終わり、初めての集会〈マナの会〉がすんで、しばらくの歓談を終えて、バスの時間を待っていた方と集会室で話をしていたところ、何やら玄関に人の気配。ひとりの小柄な青年が立っていた。
「すいません、あの、キリスト教のことを知りたくて来ました」という。小さな稚内の町で、教会にこんな形で訪ねて来てくれる若者が居ること自体、嬉しい出来事。「どうぞ、さあ、上がって」と声をかけた。
少しの会話をするうちに、集会室ではなく、もっとキリスト教ぽい何かが感じられる所を見たいんです、というビームを感じて、「あっ、礼拝堂は2階だから行ってみよう」と伝えるとニッコリ。そりゃそうだなぁ、教会に来たんだから、教会ぽい所を見ないと納得いかないだろうな、とようやく気付く。こちらも鈍いものだ。
その後、再び集会室でおしゃべり開始。今年25歳になる彼は漁師をしているという。○○で今はホタテをやってます、と言う彼は、はや10年近くの漁師としての経験をもっているという。決して漁師という仕事が嫌なわけではない。でも、どうしても今の彼からすると、大人の価値観についていけない。みんな、横並びの考え方で・・・と言うことらしい。
オレ音楽が好きで、ニューヨークに行ってミュージシャンとして試したいっす。特にビートルズが好きで、レノンが好きで、古典に間違いなくなる力をもっているビートルズは、さかのぼると、宗教音楽・キリスト教にたどり着く、というのが彼の来会の切っ掛けの様子。
ほんものを探している彼。納得できるオレの道を探している彼。2時間は話し込んだだろうか。じっとこちらの顔を見ながら話している瞳に、すこしだけ光が差し込んできたように見えた。携帯電話番号の交換を終えて「これで、最後にすんじゃないぞ」と背中に声を投げかけた。小雨が落ちる日曜日の午後だ。
その夜、日本最北の映画館へ出かけた。昭和60年代の稚内の中学は荒れ果てていたという話を少しばかり聞いていた・・・・。そして、そこからの復活の途上で「南中ソーラン」が生まれたそうだ。
そのただ中にあった稚内南中学を舞台にした斎藤耕一監督の『 稚内発 学び座 ソーランの歌が聞こえる 』が二日間だけの上映ということを知って、どうしても観たくて出かけたのだった。
稚内に来てから初めて観た映画だったが、〈稚内LOVE〉が深まる内容に大満足。よかった。幕が下りて灯りが点るとハンカチで涙を拭いている女性の姿。こちらも久しぶりに眠くならない2時間だった。漁師の町稚内の苦悩や歴史も少しばかり知ることができて、感謝。昼間の青年の気持ちにも少しダブった。
それにしても、新しい稚内駅のビルの2階にあるキタカラの中にあるシネコンは、素晴らしい小屋だ。列毎の段差が大きくて、前の方の頭が全くと言える位、気にならない。おまけに椅子の出来具合が素晴らしい。これほど疲れを感じさせないシートって珍しいのではと思う。
日曜日の夜、疲れた牧師の背中を完璧に包んでくれていた。次に何を観に行こうかと思わせてくれる心地よさ。稚内では映画をお薦めします!旅行でお出での方も、寝る前にシネコンへどうぞ。マジ、いいですから。
追伸:
2012年11月03日公開の、吉永小百合さん主演『 北のカナリアたち 』は、礼文島・利尻島を舞台にした映画ですよ。こちらもお楽しみに(^O^)